優待は現物買付余力に対してどこまで買えるのか
3月末の優待は1年で一番多いので、できれば資金いっぱいまで優待を取りたいものです。
そこでいつも思うのは、現物買付余力に対してどこまで優待株が買えるのかということです。
今まで余裕現金内で適当に優待株をクロスしていましたが、いつかその法則を整理してみたいと思っていました。
現物買付余力と信用新規建余力
余力は現物買付余力と信用新規建余力の2つがあります。
現物買付余力は簡単です。
使っていない現金資金です。
例えば、3000万円の資金があって、1000万円を現株株を持っているなら、現物余力は3000ー1000=2000万円です。
信用新規建余力は若干複雑です。
信用取引には30万円の保証金が拘束されますが、これは無視します。
また、現物の評価80%については算入しません。そこまでつきつめると値下がりに伴う追い証がかかりかねないからです。
すると、信用取引は30%の資金で100%の取引が行えることを踏まえると、信用余力は、(3000ー1000)×3=6000万円です。
クロス取引の流れ
クロス取引のためには、買いの現物と信用売りを同株数用意する必要があります。
ただ、現物買い手数料より、金利・貸株料を含めた制度信用買いのほうが手数料が安いので、通常、クロス取引の手順は次のようになります。
①権利付最終日寄りつきに、信用買いと信用売りでクロス取引。
②直後に、信用買い分を現引する。
③翌日の権利落ち日寄りつきに、信用売り分を現渡で反対売買し、精算。
①は信用余力に制約されます。
②は現物余力と信用余力に制約されます。
③は、制約がありません。(必ずできます。)
クロス限度額の計算
具体的な数字で考えてみましょう。
【例】
3000万円の資金で株式運用しています。
内訳は、現物株を1000万円と現金資金2000万円です。
このときの余力は、
現物買付余力は2000万円。
信用新規建余力はその3倍で6000万円です。
①信用買いと信用売り
権利確定最終日の前日夕方。
信用売り買いを注文します。
このときには、
現物買い付け余力は2000万円、信用買いつけ余力は6000万円あります。
信用の売り買いは信用余力に制約されますから、それぞれ3000万円分まで注文できる訳わけです。実際注文してみても、信用売り買い注文は成立します。
このまま進めてみましょう。
翌日の権利確定最終日の9時。
買建玉、売建玉が注文どおり約定します。
②現引
権利確定最終日の9時直後。
買建玉、売建玉が成立しましたので、優待の権利を取るために、信用買いした銘柄を次々現引していきます。
ここで大変なことが起こります。
「余力が不足のため現引きできません」との表示が出て、現引きができないことが判明しました。
現引きするというのは現物を買うと同じですから、信用売り買いが3000万円まで成立しても、そもそも現物買付余力が2000万円しかないのに現引きが3000万円分できるはずはなかったのです。
つまり、「どこまでクロス取引できるか」というのは、最も制約の強い②が成立するかどうかにかかっています。
(実際は、①の売買が成り行きであることから、余力は2割は間引いて評価されますが、複雑になるのでここではそれもここでは無視します。)
上の【例】で、優待クロス銘柄の買付上限額をxとして考えてみると、
x+1/3x=2000
4/3x=2000
4x=6000
∴x=1500万円
つまり、現物買付余力の75%がクロス買付上限額でした。
③現渡し
権利付最終日の夕方6時。
翌日の現渡しの注文を発注します。
現物と信用売りを同株保有していますから、これは問題なく発注が成立します。
翌日の権利落ち日。現渡し成立。
現物余力はまた2000万円まで回復しました。
まとめ
問題は、②の現引のとき。ここで必要な現物余力と信用余力があればよい。
そのためには、当初の段階で、「現物余力の75%以下」の発注であればよい。
雑駁なまとめですが、実用上は十分です。
(このルールに従って何回かやってみて、【例】②のような事故は起きていませんw)
現引に失敗した際の善後策
上の【例】で現引に途中で失敗したことに気づいたら、どう対応したらいいでしょうか。
①現引きできず残ったクロスを、午後の寄りつきで1500万円分 反対売買する。
これは手数料がムダになりますが明快です。
②保有している1000万円の現物を売って余力を増やす。
これは微妙です。決算が同じ3月であれば優待のために配当を諦めることになります。これは本末転倒です。優待は所詮一口数千円ですが、1000万円の現物から得られる3%配当なら半年分の税抜きで、1000×0.03÷2×0.8=12万円とはるかに大きく確実な半年の果実で、それを取るのが本筋だからです。
また、保有銘柄を売ったところで優待クロスの上限は 3000×0.75=2250万円。そうすると、少なくとも①の反対売買が750万円分は必要です。
さらに、時期が悪ければ売ったことで損失が出るかもしれません。
どちらにしても、クロスの当初設計として「現物余力の75%」を肝に銘じて最初から発注額を考えるのが本筋です。
現物株の信用買い振替による余力拡大
保有銘柄の決算日が3月でない場合に、保有銘柄を一時的に現物から信用替えに振り替えて余力を増やし、優待を少し多く買う方法があります。
方法:
上の【例】で現物1000万について、権利付最終日前に信用売り買いのクロス。
信用売りに対して既存の株を現渡しして精算。一時的に信用買いのみの状態にする。
これによって現物買付余力が666万円発生するので、
現物余力2666×0.75=2000万円
元の現物余力2000万円を単純に利用し1500万円分の優待クロスをする場合に比べて、500万円多く優待クロスできます。
信用買い分は、権利落ち日の寄りつき後に現引きして、現物に戻します。
信用売り買い手数料1000円と引き替えに1万円程度の優待を取ることができるなら、それなりの余得があります。